12月23日(日) 小雨

今日は無心でカバーを折り続けた一日だった。書店で本を買ったときに付けてもらえるブックカバー。あれは基本的に店員が一枚の紙から折っている。うちの店の場合、文庫と新書判のみ機械折りで、残りのサイズはすべて人力で折らないといけない。基本的にレジに入っているスタッフが手が空いたときに片手間で折るものなのだが、明日は一年で最も忙殺されるクリスマスイヴ。カバーが無くなっても折れる余裕がある、という希望的観測は一切できないので、明日を安心して迎えられるように空いてる時間は殆ど全てカバー折りに捧げた。

クリスマス前後の日曜・祝日は基本的に荷物がお店に届かない休配日で、品出し・抜き取り・返品梱包といった仕事がない。毎日大量の荷物を捌いている社員の手が空くのに何がそんなに大変なのかというと、「プレゼント包装」である。本屋の仕事でいちばん人的リソースを消費するのは本の包装、と言っても過言ではない。うちはカウンターにレジが一台しかなく、レジ打ちのスタッフが受けるとレジが詰まってしまうので売り場に出ている社員を呼んで対応することになっている。それがクリスマスの前後では社員がカウンターに張り付けになるほどプレゼント包装の依頼が殺到する、らしい…。途切れることのないレジと、包装紙をもってカウンターに張り付けになる社員。想像しただけで憂鬱になるが、明日に備えてやれるだけのことはやっておこうと思い、自主的にカバー折りに専念することにした。

それと今日は、病欠でしばらく休んでいた女性社員のMさんが職場に復帰していた。手術明けで退院してまだ間もないそうで、見るからに体調が良さそうには見えない。深刻そうな声を掛けると気疲れしてしまうと思ったので、「おや、生きてますね?」と軽口を叩いたら、笑ってくれた。カバーを折る片手間で、Mさんの「掛かった医師がイケメンだった」という話に「医師でイケメンって最強じゃないですか?」と相槌を打ち、「女子トーク」に興じる。三十代前半の結婚指輪をはめていないイケメン医師がいかに危険か、きっと遊び慣れているに違いないという下世話な話をして休憩までの時間を過ごした。Mさんは女子力インフレ系の高戦闘力大人女子なので、よくお勧めのコスメやボディクリーナーの情報などを教えて貰う。私もMさんを見習って、女子力を上げていきたい。

休憩時間は、はいしま潮路の『冬季限定』を読んだ。冬の人肌恋しい時期だけセフレ関係になる両片想いBLで、ウリをやっていた受け(小悪魔ビッチ)がただ純粋に攻めに恋をしている、という私の性癖が役満揃った作品だった。自分で読んでみて良かったので、急遽思いつきで24日・25日限定で「クリスマスに読みたいBL特集」を売り場に展開する。先の『冬季限定』と、ダヨオ『YOUNG GOOD BOYFRIEND』、ARUKU『嫌い、大嫌い、愛してる。』を面陳した。BLはクリスマスにまともな売上が見込めるジャンルだとは思えないので、「売れたらラッキー」くらいの気持ちでごく簡単なポップを書いた。

休憩から上がって自分の作業を終えたら店長と二人になったので、最近のオタクジャンルの概況を意見交換する。カルロ・ゼン原作の新作コミックの話に始まり、星海社フィクションズの話に飛んで、何故か富士見ミステリー文庫を懐かしむという古の? ラノベオタクトークになってしまった。

22時頃には客足もめっきり減ったので、店長の好意で少しだけ早上がりさせてもらった。ありがたい。

帰宅してシャワーを浴びてから、これまでのクリスマスイヴ・クリスマスのことを思い返す。今年も積年の想いや悔恨を清算できずにクリスマスイヴを迎えるのだな、と思った。今年出会った人も、もう会えなくなってしまった人も、私のことを嫌いになってしまった人も、皆充実したクリスマスイヴを過ごせますように。私はまだ前進できずにいるけど、皆の幸せを願っています。