1月5日(土) 晴れ

正月三が日のだらけきった生活が祟って、睡眠リズムが乱れている。15時頃にのそのそ起き出したはいいものの、頭が覚醒するまで時間が掛かって、家を出るのがぎりぎりになってしまった。最寄駅まで走って電車に飛び乗り、道中でかろうじて水を調達できたものの、食事を口にすることができないまま職場に着いた。そういう日に限って隣のコンビニの店員が「ヤツ」だったりするのだ(後述)。本当に困る。

店に着いてもまだ目が覚めておらず、ぼんやりしたままレジを打つ。まだ仕事始めを迎えていない会社員も多いのか、お店は普通の土曜日以上の混み方でレジ圧が強い。けれどそれ以外は特にやることもなく、頭がシャキッとするまでレジ打ちに徹した。

今日の社員はMさん。露骨にサボりたそうにしていたので、アルバイトの身分ながら社員に「暇を出す」。彼女は重度の喫煙者で、ちょいちょい店を抜け出しては、外で一服をしている。レジのアルバイトが堅めの人だと抜け出し難いそうなのだが、私がいるときは「一服したい」と言い出しやすいらしい。私はサボりにはやさしい。それは私もサボるからだ。仕事には「サボり合い」の精神が必要不可欠である。しかし、サボりという点に関して、上には上がいた。

18時過ぎになって急にMさんがそわそわし始めたので何事かと問うたら、どうも17時から今日のシフトに入っているはずのパートのHさんが来ない、ということらしい。Hさんは18時出勤の日もあるので、今日もそうかと思っていたら違った、と言う。そういえば私も今日のシフトを確認していなかった。ぶっちゃけ、小売店で事前連絡無しの無断欠勤というのは有り得ない。シフトに穴を開けようものなら店は回らないし、来るはずの人間が来なければ阿鼻叫喚のパニックに陥る。今日のシフトにHさんが入っているという発想そのものがなかったので、全く気がつかなかった。改めてシフトを見てみると確かにHさんが入っている。病み上がりのMさんを気遣って、店長がバイトを二人重ねていたようだ。今日はレジ圧が強いといっても私一人で捌ききれるくらいの量だし、Mさんの仕事も滞留していないので、別にHさんが居なくても困らない。Mさんは連絡だけしてみると言って、スタッフエリアへ降りていった。

戻ってきたMさんを休憩に出す際に、隣のコンビニが「あの人」でヤダ、という話を聞いた。Mさんは頻繁にサボりに出る代わりに、社員1・バイト1の日にバイトが極力店で一人にならないように気を遣ってくれる。裏を返せば休憩時間を長く取れないゆえ、小刻みに「一服」の時間をとっているともいえる。私も「ヤツ」と会話したくない気持ちは痛いほどわかるので、「遠くのコンビニまで買い物に行ってきてもいいですよ」と言って、Mさんを送り出した。私も「遠くのコンビニ」まで出ないといけないので、ついでに「おつかいを頼めばよかった」と気づいたのはMさんを送り出した後。遠くのコンビニまで出る労力を費やしてでも、隣のコンビニ店員と会話するのは避けたい。そうなると、休憩時間はスタッフスペースでBLコミックを読むか、食事をとるかの二者択一になってしまう。空腹でふらふらしていたが、なんとなくBLを読みたい気持ちが優った。BLでお腹は膨れないが、精神の栄養にはなる。

骨のある作品が読みたい気分だったので、夏野寛子の『冬知らずの恋』を手に取った。公式サイトで試読できる第1話にショックを受けて長らく敬遠していたのだけど、最後まで読んでみると爽やかなハッピーエンドでした。悔しいけどセックスの最中に「好きだよ」って言ってくるクズな攻めが好き。これでときめいてしまう受けに共感しちゃうから、私は駄目なのだな。きっと。

今日の売り場作業は特集棚の改装。休憩から戻ってしばらく経つとばったり客足が途絶えたので、Mさんにお願いして売り場に出してもらう。特集作品は入れ替えないが、棚板や背景など、全体に赤の包装紙を貼って見栄えを変えてみた。赤色は連発すると売り場が下品に映るので「赤文字は使わない」というのがマイルールなのだが、空間を意識して面で使うと適切な視線引き寄せ効果が生まれる、ということが実感できた。

こうした作業は、店内が閑散としていてなおかつ注文品も入って来てない日に思い切ってやってしまうに限る。改装のアイデアを思いついたのは、今日のレジ番で特集作品を2冊売ったから。特集作品を入れ替えないと常連さんには飽きられてしまうのだが、一見さんには安定して売れるということがわかってきた。特に年末年始は一見さんの来店が増えるので、このタイミングで特集を入れ替えるのは得策ではない。自信を持って推している作品なら、見せ方の工夫で売りたい。

特集棚の入れ替えはどれくらいのスパンが適切なのだろうか? 私見ではそこに法則性はなくてもいいと考えている。よくあるのは1ヶ月単位での入れ替えだが、常連さんだって毎日は来ないし、生活のルーティーンにでも組み込まれていなければ来店に法則性はない。切り替えが月初めであることよりも、「予告すること」のほうが大切であると考える。さらに一見さんにも売りたい、ということを考えると「1ヶ月」はやや短いと感じているのだが、何かいいルールはないだろうか。