1月7日(月) 晴れ

今日も『5人の王』のコミック1〜3巻が売れた。売り場に展開して1ヶ月で3セット目。これまで買っていかれたお客さんは例外なくまとめ買いで、うちでこういう売れ方をするタイトルは他に『だかいち』や『テンカウント』くらいしかない。これらのメジャータイトルほど知名度もなければ、サクッと読める作品でもないので、初めてのパターンといえそう。自分で読んでハマったので、面白い作品には違いないと確信しているのだが、ここまで回転が良いとは予測できなかった。BLジャンルで脈略なく置いた棚差しのシリーズが1ヶ月で3セットも動くなんて、うちくらいの規模の店ではそうそうない。先に挙げたメジャータイトルでも3ヶ月に1セット売れれば良いほう。『5人の王』は性癖に刺さった人をまとめ買いに誘う、確かな地力のある作品なのかもしれない。

今回買っていかれたのはいつもの常連さん。来店頻度はそれほど高くないが、買うときはいつも5冊以上ドカ買いしていく人で、レジに現れると緊張してしまう。買っていかれる本の傾向も私の素の趣味と近い(と一方的に感じている)ので、その方が私が売り場で提案したセレクトを買っていってくれたのが嬉しかった。「こいつ(売り場の担当氏)がそんなに推すなら、試しに買っていってやるか」と思われる書店員になりたい。尚、自分のレジで売った常連さんの趣味をある程度把握しているのはあくまでも職業上の事由で、お客さん個人への関心ではありません。為念。

それと関連して思うのは、売り場作りのこと。お客さんに納得した上で買って貰いたくて、私は既刊のシュリンクを積極的に外してしまうのだけど、全てのお客さんが合理的に買い物をしているわけではない、ということを最近実感するようになった。その日の気分や衝動を重視する人は、パッケージだけで素早く取捨選択して、両手で抱えるようにしてレジへ持ってくる。直感重視なのか、本選びにそれほど時間をかけないので売り場の滞在時間も長くない。

これまでの基本方針は「棚の回転を上げるために、単巻完結の本をシュリンクをかけずに差す」だったのだけど、シュリンクを掛けてシリーズものを置いたほうが衝動買いのお客さんを増やせるのかもしれない。この二つは売り場で両立できないので、お客さんの買い方をよく観察してバランスを取っていく必要があると思った。お店的には購買力のあるお客さんのニーズを優先したほうが短期的な売上向上につながるのだが、購買力が小さくても伸び代のある10代のお客さんを「育てたい」という気持ちもあり、葛藤する。

今日読んだ本は中田アキラの『ダブルウルフ』。余裕のある受けと、ワンコな攻めの同級生BLで、人によっては「逆かな?」と思うかもしれないビジュアルのカップリング。キスフレから始まって、余裕の無い攻めが理性崩壊するのを待ってましたとばかりに受け入れて優しく抱かれる受けの心理描写が丁寧。ただ私はワンコな攻めがときどき見せる男の顔のほうが萌えかな。私としては珍しく攻めに萌えた作品でした。

中田アキラ作品は棚差しで回転が良かったので手を伸ばしてみたけど、納得できるクオリティ。いま差してるのは『ダブルウルフ』と『恋する鉄面皮1-2』だけなので、電書サイトの試し読みを読みながら追加で『リフレイン』と『不器用なライオン』の補充注文をかけた。

他に気になったのはdaisy comicsの新刊で田中森よこたの『ところで今は何番目でしょうか。』。男も女も抱くヤリチン大学生の攻めに、「何番目でもいいから恋人にして欲しい」と乞う泣き虫大学生の受け、というカップリングで、健気な受けがかわいかったので3冊入れることにした。恋い焦がれる乙女な受けが好き。発売日には間に合わないが、届いたら平台に展開して様子を見てみたい。電書サイトの単話売りで最終話まで試し読みが出ているので、隙間時間に読んで、受けのかわいさを社員のMさんに力説してみたら「私にはわからない」と一刀両断されてしまった。Mさんは自己肯定感が高いので、この作品の攻めみたいなクズ男には引っかからない、ということらしい。「私を一番に見てくれる人じゃないとヤダ」と言っていて、「強いな」と思った。