12月19日(水) 晴れ

出勤早々、顔を合わせた店長に「地獄へようこそ」と告げられてしまった。カウンターの中にうず高く積まれた未シュリンクのコミックの山。今日はジャンプ系コミックス(YJ・GJ・UJ)の発売日でコミックの入荷が多いにも関わらず、途絶えることのない客足と年末特有のプレゼント包装の駆け込み需要で朝の人の仕事がまだ片付いてない、ということらしい。忙しくなりそう、という嫌な予感が的中して、ひとときも手の空く瞬間がない忙しい一日だった。

今日の遅番のアルバイト&パートは3人。いつもは社員1・バイト1とかなので、万全の布陣であるにも関わらずこれほど忙しかったのは、朝番のシフトで人が薄かったからである。社員は朝から店長が通し番。そういう状況で今日の仕事が始まった。アルバイトのT中君とパートのHさんが来る17時まで、一人でレジを打ちながらコミックにフィルムをかける。が、レジが忙しすぎて殆ど作業が進まなかった。やがて二人が出勤して、私がメインでレジに入り、その横でHさんがコミックをシュリンク機に通し、シュリンク済のコミックをT中君が順次品出し、というフォーメーションに。

しかしHさんの手際が悪くて作業が遅々として進まない。店長に許可を貰ってフォーメーション変更。Hさんにレジに入って貰い、時折Hさんをフォローしながらコミックのフィルム掛けとシュリンクを同時に並行していく。Hさんは人は良いのだが作業の要領が絶望的に悪く、Hさんの能力を相当低く見積もっている店長ですらまだ「想定が甘い」というくらい、任せていたシュリンク作業が滞留してしまった。Hさんはレジは問題なく(?)こなせるので、私がシュリンク作業を担当したほうが速い。レジ内に積んでいたコミックを全てT中君に引き渡したら、今度は売り場に出ているコミックを持ってきてシュリンク機にかける。コミックの発売日はシュリンクが間に合わないので、朝の人が先にフィルムだけ掛けて少し売り場に出しておき、シュリンク済のコミックと入れ替える形で回収してシュリンク機に通すのである。作業を全て終えたのが18時半過ぎで、休憩に出る19時まで30分ほど自分の作業ができるかなと思ったら、丁度そのタイミングで来店した角川の営業さんに捕まってしまった。店長はまだ休憩から戻ってこない。その場で営業さんに発注できる担当ジャンルをもっている人間は私しかいないので、仕方なくデータを見ながら発注内容を検討することにする。

業界再編でKADOKAWAに集約された元ブランドカンパニーのBLレーベルは多い。具体的には、元々もっている「あすかコミックスCL-DX」の他に、エンターブレインの「B's-LOVELY COMICS」、メディアファクトリーの「フルールコミックス」などがそうだ。私の担当範囲では、営業さんが来店しているときはこれらのレーベルから刊行されている作品を直接発注することになる。

KADOKAWAのBLレーベルの特色を一言で形容すると「ティーンエイジャー向け」に尽きる。実際はそれなりに中高年層のお客さんも買っていかれるのだが、私はこれらのレーベルが訴求力を持つのは中高"生"層、とみる。端的に言うとハイコンテクストな魅力をもつ主要レーベルと比較すると訴求力が弱く、(あすかコミックスCL-DXの看板作品を除く)刊行作品も総じて小粒で、有象無象の中からローコンテクストな魅力を放つ作品を発掘していかなければならない。うちの店では中高生層をターゲットにする作品は平台に置いてるので、作品タイトル数の上限は1〜2。冊数もせいぜい各4冊がリミット、という規模感である。営業さんにとっても私と話をするメリットは殆どないに違いないのだが、それでも顔を覚えてくれる営業さんと短い時間で意見交換をするのは、双方にとってメリットになると私は考えている。直接会って得る情報は、それだけで貴重なのだ。

しかし、丁度数日前にKADOKAWAのWHL(Web Hot Line)で発注を済ませていたタイミングだったので、今日は前回同じ営業さんと話をして入れて貰ったタイトルの売上結果を報告して、WHLで保留扱いになっている作品を優先的に回して貰えないか、という相談をして話を切り上げた。営業指示による送品はWHLの注文よりも優先度が高いので、どこかに品物があれば確実にかつ速く送って貰える。

休憩から戻ると、自分の作業を少しだけさせて貰った。こんな忙しい日に準備をしてきてしまったのは間が悪いというほかないのだが、今日は事前に作ってきた作家別ジャンルサインを導入して大掛かりな売り場の並び替えをした。具体的にはこれまでonBLUEの棚で棚差ししていた作家を中心に、新しく作った作家別棚に移した。選別基準は「刊行作品が複数レーベルにまたがる作家」がメインだが、同時に担当の私がお客さんに「作家」として認知してもらいたい描き手を恣意的に選んでもいる。これまでのレーベル分けやジャンル分けを維持&縮小しつつ、新しく売り場に作家名による秩序を作ることで、どの作家を多く入れ、あるいは撤去するのかの判定で精度を上げていきたい、という思いがあった。すぐには売れなくても、お客さんが手に取って棚に戻した本は微妙に痕跡が残るので、興味関心を測る手掛かりになる。しばらく様子をみながら、注視していきたい。